中高齢寡婦加算 経過的寡婦加算

会社員である被保険者に万が一のことがあった場合に、遺された家族の支えとなる遺族厚生年金ですが、その制度の一環として「中高齢寡婦加算(経過的寡婦加算)」が用意されています。

サラリーマンだった夫に先立たれて遺族となった中高齢の妻が、就労して収入を確保することは年齢的にも難しく、さらには子どもがすでに成長したことで、遺族基礎年金を受給することができないケースも多くあります。

そういった不利な状況の中で困窮してしまわないように、遺族厚生年金への上乗せで収入減をサポートしてもらえる加算制度は、いざという時には心強い妻の特権なのです。

そんな「中高齢寡婦加算(経過的寡婦加算)」を受給するための要件から、いつまで貰えるのか、受け取れる金額、その他の注意したい点などを、まとめてご紹介していきたいと思います。ぜひ参考にしてみてください。

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中高齢寡婦加算の受給要件

中高齢寡婦加算を受けるには、以下の要件をすべて満たす必要があります。

  1. 被保険者である夫に生計維持されていた妻である
  2. 夫の死亡時に子どもがおらず40歳以上65歳未満の妻、もしくは40歳に達するときに遺族基礎年金の支給要件を満たした子どもがいる
  3. 長期要件(死亡日要件)による支給は、夫の被保険者期間が240月以上だった

ちなみに、国民年金による遺族基礎年金では、「子どもがいない」または「子どもが18歳年度末(障害等級1・2級の場合は20歳年度末)を経過した」という配偶者は、受給することができません。

その場合、遺族厚生年金は受給できても、公的年金の1階部分である国民年金からは、何も支給されない期間が発生します。そんな空白部分の不足分を代わりに補ってくれる加算年金が「中高齢寡婦加算」の制度です。

そのため、遺族基礎年金を受給している場合には、中高齢寡婦加算の要件を満たしていても同時に貰うことはできずに、支給停止となります。原則1人1年金として、認識しておきましょう。

中高齢寡婦加算の支給期間

中高齢寡婦加算は、40歳から65歳までの期間に加算支給される有期年金です。

夫が死亡したときに、子どものいない妻が40歳以上65歳未満であれば、死亡したときから65歳になるまで、中高齢寡婦加算を受けることができます。

ただし、夫の死亡時に40歳未満で子どものいる妻の場合には、遺族基礎年金を受給しているが40歳以降に子どもが18歳の年度末を経過して遺族基礎年金の受給権がなくなるときには、その時点から65歳まで中高齢寡婦加算を受けることができます。

そのため、夫の死亡時に40歳未満の妻で遺族年金を受給しており、40歳になる前に子どもが18歳年度末を経過してしまうケースでは、失権するため中高齢寡婦加算を受けることができません。

少しややこしいですが、40歳未満の受給権ポイントとしては「夫の死亡後に妻が40歳になる時点で、子どもがいくつなのか?」が重要な判断目安ですね。

中高齢寡婦加算の支給額

遺族厚生年金に加算される中高齢寡婦加算は、およそ遺族基礎年金の3/4にあたります。被保険者期間や妻の生年月日等にかかわらず、一律で定められた加算額が支給されます。

算出される計算式は以下の通りです。

780,900円×改定率×3/4

毎年多少の変動がありますが、平成29年度の加算額は年額58万4,500円となっています。

中高齢寡婦加算の後に経過的寡婦加算が貰える

遺族厚生年金を受けている妻が65歳になると、自身の老齢基礎年金を受けられるようになり、中高齢寡婦加算の支給は終了してしまいます。

しかし、急激な収入減はその後の生活に大きな支障をきたす恐れもあることから、昭和31年4月1日以前生まれの妻に対しては、中高齢寡婦加算の代わりとして、経過的寡婦加算が上乗せされるしくみとなっています。

その他にも、65歳以降に夫が亡くなった場合であっても経過的寡婦加算の支給対象です。

ではなぜ、昭和31年4月1日以前生まれの妻に限定された措置なのでしょうか。その理由としては、現在では強制加入となっている国民年金ですが、会社員の妻が強制加入となったのは昭和61年4月1日以降のことです。

それ以前に任意加入をせずに保険料を納付していなかった妻は、老齢基礎年金が非常に低額となってしまいます。

そのため、自身の老齢基礎年金が支給されるようになったときに、それまで受け取っていた中高齢寡婦加算よりも年金額が大きく低下してしまうことを防ぐ、いわば救済措置です。中高齢寡婦加算に満たない不足額を、経過的寡婦加算として受け取ることができます。

【注意!】経過的寡婦加算は妻の生年月日により決定する

経過的寡婦加算では、老齢基礎年金に上乗せして中高齢寡婦加算と同じ金額になるように、妻の生年月日に応じた率によって算出される加算額と決められています。

計算方法は、以下の通りです。

中高齢寡婦加算額-老齢基礎年金×寡婦の生年月日に応じて定められた率

なお、昭和31年4月2日以降に生まれた妻には、老齢基礎年金の満額×3/4が支給されることになっていますので、著しく低額になるということはないため、経過的寡婦加算はありません。