
65歳になって年金生活に入った時に、生計を維持している妻や子がいる場合に生活の手助けとして国が用意してくれているのが「加給年金」と「振替加算」です。
加給年金は厚生年金に20年以上加入していた夫が65歳になってから、振替加算は妻が65歳になってから受け取ることができる年金制度です。
この二つは聞きなれない名前ということと、内容がちょっと分かりにくいという理由から、あまり中身を理解していない人もたくさんいます。ですが加給年金も振替加算も手続きをしないと受給できませんので、これから年金生活に入るというご家庭の方は受給資格と手続き方法だけでもチェックしておいてください。
このページでは加給年金と振替加算のことを出来るだけ分かりやすく解説していますが、もし分かりにくかったら他のサイトも参考にしてみてください。
加給年金とは?
一家の大黒柱の会社員(ここでは夫とします)は厚生年金に強制的に加入することになっていますよね。
この厚生年金の被保険者期間(加入していた期間)が20年以上ある夫が65歳に達した時に、その夫に生計を維持されている妻、または子供がいる時に夫の年金額に加算される年金を「加給年金」と言います。
一人につき20万円以上も加算してくれる制度ですので、かなり生計の足しになりますね。
ただし、妻や子には年齢制限があり、妻は65歳になるまで、子供は18歳に到達した年度末までが貰えることになっています(妻の場合、65歳以降は振替加算として年金を受け取れるようになります)。
妻と子の両方が年齢条件を満たしている場合は、重複して年金が加算されます。
加給年金の対象者は?条件を確認しておこう
加給年金の対象者、受給条件については以下の表にまとめていますので確認しておいてください。ちなみに大黒柱の会社員が夫だった場合を仮定して以下の表を作っています。
夫の条件 | ・厚生年金保険に20年以上加入していること(特例あり) ・妻、または子との間に生計維持関係があること |
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妻の条件 | ・婚姻届を出している配偶者、または事実婚の関係にある場合も可 ・厚生年金の被保険者期間が20年未満 ・障害を支給事由とする公的年金を受けていない ・65歳未満である(それ以降は振替加算になる) ・年収が850万円未満 |
子の条件 | ・18歳に到達した年度末までの子 ・または障害等級1級・2級の場合は20歳未満の子 ・婚姻していない |
この表に当てはまる場合、手続きを行うことで加給年金を受け取ることができます。

妻の方の条件に「年収が850万円未満」がありますが、もし現在の年収が850万円以上あったとしても、大体5年以内に850万円未満になると認められる場合は加給年金の対象者として条件を満たすことになります。
- 妻が年上(姉さん女房)の場合は加給年金は貰えるの?
- 例えば妻の方が3歳年上だった場合、夫が65歳になる時点で妻は68歳のため、加給年金の要件を満たすことができません。そのため、姉さん女房の場合は加給年金は貰えないのです。
ただし、夫が65歳になった時点で振替加算は受給することができます。振替加算は加給年金が移行した形なので似ているものではありますが、加給年金の方が貰えるお金が多いため、年下の妻の方がお得だと言われています。
加給年金はいくら貰えるのか
加給年金は実際のところ、いくらくらい貰えるのでしょうか?平成28年度の年金額は以下の通りです。
妻(配偶者) | 224,500円 |
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1人目の子 | 224,500円 |
2人目の子 | 224,500円 |
3人目以降の子 | 74,800円 |
このような金額になっています。ですが、この他に「配偶者特別加算」が行われるため、受給権者である夫の生年月日に応じて配偶者加給年金に特別加算が上乗せされる仕組みになっています。
加給年金額の特別加算をくわえて、いくら貰えるのか計算してみよう
上乗せされる特別加算額は以下のようになっています(平成28年度)。
ちなみに、この生年月日は配偶者(この場合は妻)のものではなく、受給権者(この場合は夫)の生年月日となっていますので注意してください。
昭和9年4月2日~15年4月1日生まれ | 33,200円 |
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昭和15年4月2日~16年4月1日生まれ | 66,200円 |
昭和16年4月2日~17年4月1日生まれ | 99,400円 |
昭和17年4月2日~18年4月1日生まれ | 132,500円 |
昭和18年4月2日以降生まれ | 165,600円 |
例えば夫の生年月日が昭和18年4月2日以降の場合、妻の加給年金は本来の224,500円に加え、165,600円が特別加算されます。
つまり
224,500円+165,600円=390,100円
妻だけで390,100円の加給年金になるのです。
さらに子供が2人いる場合は
390,100円+224,500円+224,500円=839,100円
何と約84万円も加給年金を受け取れることになるのです。
加給年金は妻が65歳になるまで、子供が18歳で高校卒業するまでという年齢制限がありますが、それでもかなり生計の助けになってくれますね。
【ちょっと難しいかも】昭和26年4月1日以前の生まれの方は中高齢の特例も知っておきましょう
生年月日が昭和26年4月1日以前の生まれの方は、「中高齢者の特例」を適用できるようになります。
「中高齢者の特例」とは、加給年金は本来なら厚生年金保険に20年加入しなければ受給することはできませんが、昭和26年4月1日以前の生まれの方は40歳(女性は35歳)以上の厚生年金の被保険者期間が15年以上あれば条件を満たすことになるという制度のことです。
生年月日によって必要な被保険者期間が15年~19年と変わってきます。以下の表を参考にしてください。
昭和22年4月1日以前生まれ | 15年 |
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昭和22年4月2日~23年4月1日生まれ | 16年 |
昭和23年4月2日~24年4月1日生まれ | 17年 |
昭和24年4月2日~25年4月1日生まれ | 18年 |
昭和25年4月2日~26年4月1日生まれ | 19年 |
この場合、厚生年金の被保険者期間は20年間(240月)に満たないですが、被保険者期間が240月あるものとして加給年金額が計算されます。
注意!届け出を忘れないで!
加給年金は夫が65歳になると自動で貰える訳ではなく、ちゃんと申請しないと受給ができませんので、その点だけ注意してください。
届出はお近くの年金事務所で行えますので、忘れずに行いましょう。
振替加算とは?
加給年金は配偶者(ここでは妻)が65歳になると受給資格を失ってしまいます。その代わりとして妻は65歳からは別の年金を受け取れるようになります。それが「振替加算」です。
基本的に65歳からは妻も老齢基礎年金を受け取れるようになるため、妻は「老齢基礎年金+振替加算」の年金額を受け取れるようになります。
ちなみに配偶者(妻)の方が年上の場合、加給年金を受給することは出来ませんが、振替加算は受給することはできます。夫が65歳になった時点で申請すれば、その時から振替加算を受け取ることができるようになります。
ただし、配偶者(妻)が昭和41年4月1日以前の生まれであることなどの条件があるため、全員が受け取れるわけではありません。
以下、振替加算を受け取るための条件、貰える年金額などを書いていきますので、良ければ参考にしてください。
振替加算の対象者は?条件を確認しよう
配偶者(ここでは妻)が65歳になってからは加給年金が振替加算に変わるわけですが、全員が貰えるわけではありません。
振替加算が貰える配偶者の条件は以下の通りです。
- 昭和41年4月1日以前に生まれた人が65歳になった時(妻の方が年上の場合は夫が65歳になってから受給できる)
- 厚生老齢年金の被保険者期間が20年未満
- 年収が850万円未満(所得655万5,000円未満)
ちなみに加給年金の時は夫の年金に加算されていましたが、振替加算からは妻の老齢基礎年金に加算されるようになります。
振替加算の金額
振替加算額は生年月日によって変わってきます。以下の表のとおりです。
昭和22年4月2日~23年4月1日生まれ | 98,800円 |
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昭和23年4月2日~24年4月1日生まれ | 92,700円 |
昭和24年4月2日~25年4月1日生まれ | 86,900円 |
昭和25年4月2日~26年4月1日生まれ | 80,800円 |
昭和26年4月2日~27年4月1日生まれ | 74,800円 |
昭和27年4月2日~28年4月1日生まれ | 68,900円 |
昭和28年4月2日~29年4月1日生まれ | 62,900円 |
昭和29年4月2日~30年4月1日生まれ | 56,800円 |
昭和30年4月2日~31年4月1日生まれ | 51,000円 |
昭和31年4月2日~32年4月1日生まれ | 44,900円 |
昭和32年4月2日~33年4月1日生まれ | 38,800円 |
昭和33年4月2日~34年4月1日生まれ | 33,000円 |
例えば平成28年度の場合、65歳になるのは昭和26年4月2日~昭和27年4月1日生まれの人であり、この期間の人が対象となります。
つまり、平成28年度に新たに対象となる人の振替加算額は74,800円ということですね。この金額をずっと貰うことができるようになっています。
要注意!姉さん女房の場合は届出を忘れないで!
奥さんの方が年下で、すでに加給年金を受け取っている場合、基本的には加給年金から振替加算への切り替えは「年金請求書」に配偶者の基礎年金番号などの情報を記入することで完了します。
ですが、奥さんの方が年上の「姉さん女房」の場合は夫が65歳になった時に振替加算受給のための届け出を年金事務所へ提出する必要があります。
この届出を忘れると振替加算を受け取ることができませんので、奥さんが年上の場合は夫が65歳になる時に必ずお近くの年金事務所へ手続きに行きましょう。