国民年金 未納のデメリット

20歳からの国民の義務である「国民年金保険料の納付」ですが、失業、病気、など経済的に苦しいときは支払が難しいことも考えられますよね。保険料の納付率は平成29年現在で6割を切っていますし、「老後もらえるかわからないし、払わなくてもいいんじゃない?」と考えてしまいがちです。

ですがちょっとおまちください!未納・滞納した場合にはたくさんのデメリットがあるのです。今回はデメリットがどんなものか、と保険料の納付が難しいときにはどうしたらいいのかについてお伝えしたいと思います。

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その1 強化されている「保険料の強制徴収」

国民年金保険料の納付率は、厚生労働省の資料によると平成29年6月の段階で56.5%。少しずつ改善しているように思えますが、学生や低所得者など保険料の納付を免除・猶予されている人を含めた実質的な保険料納付率は4割ほどとなっています。

保険料を払っていない人は「強制徴収」の対象となる可能性があります。

強制徴収の基準
年間所得 滞納月数
2014年度
~2015年度
400万円以上 13ヶ月以上
2016年度 350万円以上 7ヶ月以上
2017年度 300万円以上 13ヶ月以上

これは、強制徴収の基準を表にしたものです。2014年から徐々に基準が下がり、対象を拡大しているのがわかっていただけるかと思います。

滞納が続くとまず、文書、電話、訪問で保険料の納付を求め、それでも納付がないと財産を差し押さえ、滞納処分を開始することが記された「最終催告状」が送付されます。

その「最終催告状」でも納付がなかったときには「督促状」が送付され、その期限内にも納付がない場合、滞納処分が開始されます。

「督促状」が送られてくる段階になると年利14.6%の延滞金が加算されます。

この利息がかかる前、つまり「最終催告状」の段階までが、無利息で納付する最後のチャンスです。支払い忘れていただけだったり、払う余力がある方は、この「最終催告状」期限までに納付してしまうのがおすすめです!

それでも保険料が納付されない場合、財産の差し押さえが行われます。財産の差し押さえは預貯金や車だけでなく、家、土地などの不動産も対象になります。

また、本人以外の配偶者や世帯主の財産も差し押さえ対象となることには注意が必要です。

その2 障害基礎年金がもらえないかも

大きな怪我や病気で、障害認定日に障害等級1級、もしくは2級の状態になった場合、障害基礎年金の受給対象になります。

・1級 974,125円(月額 81,177円)
・2級 779,300円(月額 64,941円)

突然の事故や病気、そんな生活環境の変化の中で障害基礎年金が受給できることは、経済的にはもちろん、精神的にも大きな支えになることでしょう。

ですが、国民年金を未納・滞納することが、障害基礎年金の受給資格を失ってしまうことにつながる可能性があるのです。

障害基礎年金は、次の2つの要件があります。

・加入してから初診日のある月の前々月までのうちで3分の2以上が未納せず保険料を納めていた期間である。(保険料を免除された期間は含めて計算することができます)。

・ただし、初診日が平成38年4月1日前の場合は初診日の前日において初診日の属する月の前々月までの1年間の保険料を納付しなければならない期間のうちに、保険料の滞納がなければ受けられます。

病気や怪我をしてから保険料を納めた期間が足りない場合、それからあわてて国民年金保険料を納めたとしても、その期間は納付済み期間としてはカウントされません。

国民年金納めている第1号被保険者は多くが自営業です。サラリーマンと異なり、自営業の場合は自分が働かないことが大きく収入に響きます。大きな怪我や病気をしたときには事業自体を続けていくことが難しくなってしまう場合も考えられることです。

サラリーマン以上に病気や怪我のリスクには備えが必要でしょう。

その3 万が一のとき、遺族年金がもらえないかも

国民年金に加入中の人が亡くなったとき、子のいる配偶者や、亡くなったことで親がいなくなってしまった子どもに支給されるのが遺族年金です。

金額は、「配偶者の基本額+子の加算額で計算できます。

例えば、配偶者と子2人の場合だと、

・779,300円+448,600円=1,227,900円(月額102,325円)

を遺族年金として受け取れます。

この遺族年金も、「国民年金保険料の一定期間以上の納付」を条件に挙げているので、国民年金保険料の未納や滞納によって受け取れなくなる可能性があるのです。

遺族基礎年金は、次の2つの要件があります。

・被保険者(死亡した者)について、保険料納付期間+保険料免除期間が国民年金加入期間の3分の2以上あること

ただし、初診日が平成38年4月1日前の場合は初診日の前日において初診日の属する月の前々月までの1年間の保険料を納付しなければならない期間のうちに、保険料の滞納がなければ受けられます。

例として、29歳男性、配偶者は専業主婦、子ども2人がいた場合だと、国民年金の加入期間は20歳からなので9年間。

その3分の2以上を満たすことが要件ですので、3年以上未納期間があると遺族は月額102,325円の遺族年金を受け取ることができないということです。(平成38年4月までは前々月までの1年間保険料を納付しておけばOK)

寿命は誰にも予想することができません。遺されたご家族は精神的に大きなダメージを負います。せめて経済的には不安が減るように備えておいてあげたいですね。

その4 65歳以降の老齢基礎年金にも影響が

現行の制度のままだとすると、65歳を迎えたときに老齢年金の支給が始まります。20歳から60歳までの40年間加入した人は満額となり、年額779,300円、月額64,941円(平成29年度の金額)を受け取ることができます。

しかし、老齢基礎年金は保険料の納付期間に最低でも10年間保険料を支払っていないと受け取ることができず、受給額は0円になってしまいます。

仮に10年の納付期間は超えていたとしても、未納・滞納の期間が増えていくことは年金額が満額からどんどん減っていくことを意味します。

例えば、納付期間が15年、未納期間が25年の場合を計算してみると、年金額は292,237円(月額24,353円)になり、満額受け取りの人との差は月額で40,588円にもなります。

65歳から新たに収入の柱を増やすのは難しい場合も多く、老齢基礎年金は老後の生活の柱となる人が多いです。受給資格を満たして、余裕のある老後生活にしたいものですね。

「お金がない!」困ったときは保険料免除・納付猶予を

未納・滞納のデメリットはお分りいただけたでしょうか?

ですが、そうはいっても今はそんな余裕がない、生活が厳しい、という場合もあるかと思います。

そんなときに活用していただきたいのが、「保険料免除・納付猶予」の制度です。

下の表をみていただくと一目瞭然ですが、「経済的に苦しいから」と相談もせず未納の状態だと、デメリットだらけです。

逆に猶予や免除の手続きをとるだけでデメリットはかなり緩和されます。

老齢基礎年金を受けるための加入期間 老齢基礎年金額への反映 障害・遺族基礎年金を受けるための加入期間
納付 ◯ 加入期間になる ◯ 反映される
年金額の全額
◯ 加入期間になる
全額免除 ◯ 加入期間になる △ 反映されるが減額あり
(年金額の1/2)
◯ 加入期間になる
一部免除 ◯ 加入期間になる △ 反映されるが減額あり
(年金額の5/8~7/8)
◯ 加入期間になる
納付猶予例 ◯ 加入期間になる × 反映されない
0円
◯ 加入期間になる
学生納付特例 ◯ 加入期間になる × 反映されない
0円
◯ 加入期間になる
未納 × 加入期間にならない
0円
× 反映されない
0円
× 加入期間にならない

また、未納の場合はあとから収入が増えて余裕ができた場合、遡って納めたいと思っても2年しか遡って納めることができません。(平成30年9月30日までは5年前までさかのぼって納付できる「後納制度」が利用できます)

一方、免除・猶予の場合は遡れる期間が10年と長くなります。

免除に関しては前年度の所得で割合が決まるのですが、失業の場合は離職票を提出することで前年度の所得に関わらず、全額免除にできるありがたい制度もあります。

免除・猶予の手続きや相談は、お近くの年金事務所、市区町村の役場窓口で可能です。困ったときは迷わず相談し、できるだけ早めに納付するのがいいでしょう。