障害厚生年金

会社員の人が加入している厚生年金。厚生年金に加入していれば老後の年金が増えるだけでなく、障害状態になった時にも障害厚生年金が受け取れるようになるため、生活を支えるための給付がしっかり受け取れるのです。

自営業の方のように国民年金のみの加入だと障害基礎年金のみという最低限の給付額になりますが、厚生年金加入者ならば障害厚生年金が上乗せされたり、対象となる障害状態が幅広かったりするのでメリットの大きい制度です。

ここでは障害厚生年金の仕組みをまとめてあるので、いざという時にこのメリットを活かせるようチェックしてみてください。

スポンサーリンク

障害厚生年金の受給要件とは

基本の条件

障害厚生年金を受け取るには次の2つに当てはまっている必要があります。

  • 初診日に国民年金に加入している人
    ※初診日とは?⇒障害の原因となったケガや病気について初めて医師の診察を受けた日。
  • 障害等級障害等級1級、2級、3級に該当。
    ※障害はそれぞれどの程度?⇒例えば1級は両足が動かない、2級は片足が動かない、3級は片足の膝から下が動かない、といった状態です。障害年金の対象になる病気やケガは、手足や目・耳などの他に精神障害、糖尿病などの内臓障害なども含まれます。

3級に満たない場合も支給される!?

障害厚生年金では、障害等級3級に満たない場合でも「障害手当金」という一時金を受け取れます。(初診日から5年以内にケガや病気が治って障害が残った場合)

障害の程度は、例えば片足の足首から下が動かない、といった状態です。

保険料納付の条件

次のどちらかに当てはまっている必要があります。

  • 今までの年金加入期間のうち2/3以上が、保険料の納付済・免除期間である
  • 初診日の前々月までの1年間で保険料の未納期間がない

普通に年金に加入していれば問題ありません。

障害認定日の決め方

次のどれかに該当した日が「障害認定日」となり、障害年金の受給権が得られます。

  • 初診日から1年6ヶ月たった時に障害状態である
  • 初診日から1年6ヶ月の間にケガや病気は治ったが障害状態である
  • 初診日から65歳の間に障害状態になった

障害厚生年金はいくら貰えるのか

年金額は厚生年金保険料の納付期間と、その間の給与によって変わります(=報酬比例)。

1級 報酬比例の年金額×1.25+配偶者加給
2級 報酬比例の年金額+配偶者加給
3級 報酬比例の年金額(最低保障584,500円)
障害手当金
(一時金)
報酬比例の年金額×2(最低保障1,169,000円)

※金額は平成29年4月分から

報酬比例の年金額って?

厚生年金の加入期間と、その間の給与の平均(平均標準報酬月額)を掛け合わせて出します。老後の年金と同じく、加入期間が長く給与が高い方が多く受け取れます。

計算方法は以下のようになります。

平成15年3月以前分
(ボーナス含まず)
平均標準報酬月額×7.125/1000×平成15年3月以前の加入月数
平成15年4月以降分
(ボーナス含む)
平均標準報酬額×5.481/1000×平成15年4月以降の加入月数

何だかとても複雑ですが…平成15年4月から平均標準報酬額となり、賞与(ボーナス)も入れて計算することになったので、式が2つに分かれているだけです。その分、いざという時には多く支給されますね。

配偶者加給とは?

妻または夫がいる場合、プラスで受け取れる給付です。

  • 対象者…65歳未満の配偶者(配偶者の年収は850万円未満であること)
  • 加給額…224,500円
で、結局いくら貰えるの?

例えば…

  • 家族構成:夫35歳、妻35歳、子3人(全員18歳未満)
  • 障害等級:夫が障害等級1級になった
  • 夫の平均標準報酬額:35万円
  • 夫の厚生年金加入期間:平成17年4月から12年間(144月)⇒300月として計算
    (なぜ300月として計算するのかは、すぐ下の章で解説しています)
障害基礎年金
(子の加算3人分を含む)
779,300円×1.25+224,300円+224,300円+74,800円
1,498,925円
障害厚生年金
(配偶者加給を含む)
報酬比例の年金額…35万円×5.481/1000×300月=575,505円
↓↓↓
障害厚生年金額…575,505円×1.25+224,500円
943,881円
合計受給額 1,498,925円+943,881円
2,442,806円(約240万円)

1ヶ月あたりだと約240万円÷12ヶ月=約20万円となります。

1級、2級の場合は障害基礎年金も貰えるので、上乗せで更に手厚く給付が受けられる、ということになります。

300月に満たない場合は300月加入していたとみなして計算する

厚生年金の加入期間がまだ短い内に障害年金の対象になると、少額しか支給されないのでは?と心配になるかもしれませんが大丈夫です。

何故なら、障害厚生年金を計算する過程で、300月(25年)に満たない場合は300月加入していたとみなして支給されるという決まりになっているからです。

そのため、仮に社会人になりたてで半年間しか厚生年金に加入していなくても、一定額以上の給付を受け取ることができるようになっているのです。

障害厚生年金はいつまで貰える?失権になる条件について

障害厚生年金は認定されたら一生受給できるとは限りません。次のいずれかに当てはまると支給が止まります。

  • 亡くなった時(失権)
  • 更新(再認定)により障害等級に該当しなくなった時(支給停止)
  • 65歳になり老齢年金の受給を選んだ場合(支給停止)
  • 労災年金や遺族年金など他の年金受給を選んだ場合(支給停止)
  • 現状届や更新の届出を期限までに出さなかった時(差し止め)

※通常1~5年ごとに届を出して障害等級の再認定を受けるシステムになっています。